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INTRODUCTION

陽の当たらない場所に咲く「山吹」から着想
資本主義と家父長制社会に潜む悲劇と、その果てにある希望

かつて韓国の乗馬競技のホープだったチャンスは、父親の会社の倒産で多額の負債を背負った。岡山県真庭市に流れ着き、今はヴェトナム人労働者たちとともに採石場で働いている。一方で、刑事の父と二人暮らしの女子高生・山吹は、交差点でひとりサイレントスタンディングを始める。二人とその周囲の人々の運命は、本人たちの知らぬ間に静かに交錯し始める−−。陽の当たりづらい場所にしか咲かぬ野生の花「山吹」をモチーフに、資本主義と家父長制社会の歪みに潜む悲劇と希望を描きだす群像劇だ。政治的な主題を声高ではなく繊細に描く作風が評価され、今年5月に行われたカンヌ国際映画祭のACID部門に日本映画として初めて選出される快挙を果たしたほか、多数の海外映画祭に招待されている。

山間で農業と映画製作を続ける山﨑樹一郎監督の長編第三作は
地方に生きる人々の慎ましい抵抗を国際的な視座で描く

本作は、岡山県真庭市の山間で農業に携わりながら、地方に生きる人々に光をあてて映画製作を続ける山﨑樹一郎監督の長編第3作。長編デビュー作『ひかりのおと』(11)では、故郷・岡山に戻り酪農を継ぐ若者の苦悩と葛藤を描き、『新しき民』(15)では江戸時代の農民一揆を題材とし時代劇に挑戦した。『やまぶき』は、再び地元でロケをし初めて16ミリフィルムで撮影に挑んだ野心作だ。

チャンス役を演じるのは、イギリスで演劇を学び、今回初めての日本映画出演となる韓国人俳優のカン・ユンス。山吹役は、『サマーフィルムにのって』(21)や『セイコグラム~転生したら戦時中の女学生だった件~』(NHK/22)など話題作への出演が相次ぐ演技派俳優・祷キララ。その傍に、川瀬陽太、和田光沙、三浦誠己、松浦祐也、青木崇高らの実力派俳優たちが集結し、田舎町に暮らす人々のほとばしる生を体現している。

本作は、フランスのSurvivance(シュルヴィヴァンス)との国際共同製作によって完成された。『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』(16)でアヌシー国際アニメーション映画祭で2冠を得たセバスチャン・ローデンバックがアニメーションパートを、オリヴィエ・ドゥパリが音楽を担当。また、フランソワ・トリュフォーやモーリス・ピアラ、フィリップ・ガレルなど巨匠監督の作品を手がけた、フランス映画の伝説的な編集マンであるヤン・ドゥデが編集協力をしている。

STORY

かつて韓国の乗馬競技のホープだったチャンスは、父親の会社の倒産で多額の負債を背負った。岡山県真庭市に流れ着き、今はヴェトナム人労働者たちとともに採石場で働き、日本人の恋人とその娘と慎ましく暮らしている。真面目で誠実な勤務態度が認められ、正社員への道が開けたと思われた矢先、不幸な事故に見舞われてしまう。一方で、刑事の父と二人暮らしの女子高生・山吹は、交差点でひとりサイレントスタンディングを始める。この小さな田舎町でも、声が小さくても、いつか誰かの人生と繋がるかもしれない。その思いは山吹の亡き母から受け継がれたものだった。二人とその周囲の人々の運命は、本人たちの知らぬ間に静かに交錯し始める。

CAST

カン・ユンス(ユン・チャンス役)

1978年生まれ、韓国ソウル出身。西江大学校で哲学を学ぶ。その後、大手航空会社を辞め、ロンドンの大学院で演劇を学ぶために留学。そこで出会った6カ国9人のアーティストと「Caketree Theatrer」を結成し、芸術監督を務める。演出・出演した作品『IF ONLY』(12年/英韓製作)でイギリスと韓国にて上演ツアーする。同作において韓国芸術経営支援センターとBritish Councilが共同主催するリサーチプログラムに選出され芸術家支援政策や劇団運営を学ぶ。その後活動の場を日本に移し、『若返りの泉』(13年/東京) 、『オバケノガッコウニキテクダサイ』(14年)を上演。映画は本作『やまぶき』が初主演となる。

祷キララ(早川山吹役)

2000年生まれ、大阪府出身。『堀川中立売』(09年/柴田剛監督)でデビュー。その後『Dressing Up』(13年/安川有果監督)で初主演を果たす。主な出演作品に『脱脱脱脱17』(16年/松本花奈監督)、『左様なら』(18年/石橋夕帆監督)、『アイネクライネナハトムジーク』(19年/今泉力哉監督)、『ファンファーレが鳴り響く』(20年/森田和樹監督)、『サマーフィルムにのって』(21年/松本壮史監督)などがある。映画だけではなくドラマや舞台CMなどでも活躍中で、2022年9月23日から10月2日まで玉田企画最新公演『영(ヨン)』に出演が決定している。

川瀬陽太(山吹の父親役)

1969年生まれ、神奈川県出身。
1995年、助監督で参加をしていた福居ショウジン監督の自主映画『RUBBER‘SLOVER』で主演デビュー。その後、瀬々敬久監督作品をはじめとする無数のピンク映画で活躍。以来現在に至るまで自主映画から大作までボーダーレスに活動している。山崎監督とは『新しき民』以来のタッグ。2022年8月26日に最新主演作『激怒』が公開された。

和田光沙(美南役)

1983年生まれ、東京都出身。『靴が浜温泉コンパニオン控室』(08/緒方明監督)でデビュー。映画を中心に、定期的に舞台にも出演。代表作に『菊とギロチン』(18/瀬々敬久監督)、『止められるか、俺たちを』(18/白石和彌監督)、『ハード・コア』(18/山下敦弘監督)、『岬の兄妹』(18/片山慎三監督)、『由宇子の天秤』(20/春本雄二郎監督)、『誰かの花』(22/奥田裕介監督)、『冬薔薇』(22/阪本順治監督)などがある。

三浦誠己(柴田役)

1975年生まれ、和歌山県出身。主な出演作品に、映画『海炭市叙景』(熊切和嘉監督)、『ディストラクション・ベイビーズ』(真利子哲也監督)、『アウトサイダー』(マーチン・サントフリート)監督、『太陽の子』(黒崎博監督)などがある他、映画『母性』(廣木隆一監督)、『ラーゲリより愛を込めて』(瀬々敬久監督)、第72回ベルリン映画祭 エンカウンター部門に正式出品された『ケイコ 目を澄ませて』(三宅唱監督)、『母性』(廣木隆一監督)などが公開を控える。

青木崇高(康介役)

1980年生まれ、大阪府出身。映画やドラマを中心に活躍。主な出演作に、NHK連続テレビ小説『ちりとてちん』、NHK大河ドラマ『龍馬伝』、『平清盛』、『西郷どん』。映画『るろうに剣心』シリーズ、2022年NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(木曽義仲役)、韓国映画「犯罪都市3」など。

桜まゆみ(山吹の母親役)

1983年生まれ、愛媛県出身。吉田恵輔監督の『犬猿』(18)に出演をしたことをきっかけに、『愛しのアイリーン』(18)主人公岩男のお見合い相手、真嶋琴美役に大抜擢。同年、ドラマ『宮本から君へ』富永役で出演する。近年の主な出演作品は、映画『空白』(21/吉田恵輔監督)、『ずっと独身でいるつもり?』(21/ふくだももこ監督)、『PLAN75』(22/早川千絵監督)、TV『シェフは名探偵』『真夜中にハロー』『メンタル強め美女白川さん』など。2022年10月29日~@下北沢駅前劇場にて小松台東新作公演『左手と右手』(作・演出/松本哲也)が控える。

松浦祐也(美南の夫役)

1981年生まれ、埼玉県出身。代表作に『マイ・バック・ページ』(11/山下敦弘監督)、『ローリング』(15/冨永昌敬監督)、『素敵なダイナマイトスキャンダル』(18/冨永昌敬監督)、『船長さんのかわいい奥さん』(18/張元香織監督)、『泣き虫しょったんの奇跡』(18/豊田利晃監督)、『岬の兄妹』(18/片山慎三監督)、『泣く子はいねぇが』(20/佐藤快磨監督)、『由宇子の天秤』(20/春本雄二郎監督)、『ONODA一万夜を越えて』(21/アルチュール・アラリ監督)、『コンビニエンス・ストーリー』(22/三木聡監督)、『”それ”がいる森』(22/中田秀夫監督)などがある。

黒住尚生(山吹の彼氏/祐介役)

1993年生まれ、大阪府出身。2019年に主演作『されど青春の端くれ』(森田和樹監督)がゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアター・コンペティション部門グランプリを受賞し注目される。近年の主な出演作に映画『東京バタフライ』(20)『片袖の魚』(21)、大河ドラマ『青天を衝け』など近作では、2022年『愛ちゃん物語♡』(大野キャンディス真奈監督)、『遠くへ、もっと遠くへ』(いまおかしんじ監督)、無声映画・活弁SFファンタジー『I AM JAM ピザの惑星危機一髪!』(辻凪子監督)などの公開作品がある

DIRECTOR & STAFF

監督

山﨑樹一郎

1978年12月11日生まれ、大阪市出身。京都文教大学で文化人類学を学ぶ傍ら、京都国際学生映画祭の企画運営や自主映画製作を始める。2006年に岡山県真庭市の山間に移住し、農業に携わりながら映画製作を始める。初長編作品『ひかりのおと』(2011)は岡山県内51カ所で巡回上映を行う一方、東京国際映画祭やロッテルダム国際映画祭ブライト・フューチャー部門にも招待される。また、ドイツのニッポンコネクション映画祭にてニッポン・ヴィジョンズ・アワードを受賞。第2作『新しき民』(2014)はニューヨーク・ジャパンカッツ映画祭にてクロージング上映され、ニューヨーク・タイムス紙でも高く評価された。さらに、高崎映画祭新進監督グランプリを受賞。映画制作と並行して、フランスのメソッドをモデルにした映画鑑賞教育を真庭市内の学校などで実践している。

音楽

オリヴィエ・ドゥパリ

1961年生まれ。クラシック音楽家の両親のもとに育つ。一時期俳優として活動した後に音楽活動に専念し始め、手がけるジャンルはロックやポップ、実験音楽など多岐に渡る。映画や映像作品、演劇の劇伴も数多く手がけており、近年の活動の中心となっている。最新作はギヨーム・ボニエ監督の映画『Tout le monde m'appelle Mike』(22年)。現在、ナタリー・ルノワール監督の新作の劇伴を準備中。

編集協力

ヤン・ドゥデ

1946年生まれ。フランソワ・トリュフォー監督『恋のエチュード』(71年)で編集技師としてデビューし、その他4本のトリュフォー作品で編集技師を務める。以降、ジャン=フランソワ・ステヴナンやモーリス・ピアラ、フィリップ・ガレルなど、フランス映画史を辿るように様々な監督と、100本以上の作品を編集している。最新作として、フィリップ・ガレルの新作が公開待機中である。

アニメーション

セバスチャン・ローデンバック

1973年生まれ。フランス国立高等装飾美術学校でアニメーションを学ぶ。在学中に制作した最初の短編『JOURNAL』(98年)以降、8作品全てが、数々の映画祭などで高く評価される。ひとりで全ての原画を描いた初長編『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』(16年)は、カンヌ国際映画祭ACID部門のオープニングを飾り、アヌシー国際アニメーション映画祭で2冠を得た。現在、長編第二作を製作中。

REVIEW

『やまぶき』の鈍いがゆえに鋭い特異さは、田舎町の偽りの静けさのなかに、破裂するように現れる。韓国人労働者チャンスを中心に始まる物語は、少しずつ多様な登場人物を迎えて肉体化し、いくつかの筋に分岐する。歪んだ家族関係が世界からその明白さを奪い去り、ちがった関係性を呼び起こすのだ。チャンスは、美南とその娘と小さな家庭を築きあげ、山吹はサイレントスタンディングに参加する。ヒロインの名前「山吹」は、黄色い花の名前であり、かつては賄賂の隠語でもあった。この意味論的な曖昧さに倣うように、山﨑樹一郎は、不安定で、自由な動きを奪われた世界をつくりだす。金銭とのさまざまな関わりの中で、人間の弱さが顔を出すのだ。カメラのわずかな動きがこの不確かさを表現する。このメランコリックな作品では、すべての技巧に内的な必然性があるようだ。ざらついた16ミリフィルムの撮影によって混濁をさらに深めながら、山﨑は、確かな手つきで、予想外なフレーミングと驚くべきモンタージュでこの曖昧な世界を描いているのだ。
    カイエ・デュ・シネマ

美しく、儚く、言葉に頼らずに、多くを伝えてくれる。類を見ない方法で隣人たちと生きる方法を探求する作品。政治的主題を、声高にではなく、非常に繊細に捉えている。私にとって『やまぶき』は恩寵だ。
    カンヌ国際映画祭ACID部門選考委員

静かに抵抗の徴を見出す作品である。
    ル・モンド

抗い難いほど魅惑的な祷キララが、繊細な役柄を見事に演じ尽くしている。
    SCEEN DAILY

今年の真の発見は山﨑樹一郎監督の『やまぶき』だった。孤独で傷ついた魂たちを描く作品だ。
    Caimán Cuadernos de Cine(スペイン/映画批評誌)

豊かなはずの国の見捨てられた土地で、自らの居場所を求めてもがく人々の共同体への人間的で誠実な賛歌。
    The Film Verdict(国際映画批評サイト)

山﨑監督は、セリフが一言しかない端役も含む全ての登場人物たちを、同じように繊細に気を配りながら観察している。
    Accréds(フランス/映画批評サイト)

穏やかな見かけの裏に、移民や家族形態の問題、そして若者たちの理想で揺れる世界を隠している作品だ。
    OTROS CINES(アルゼンチン/映画批評サイト)

山﨑監督は物語の要素を誇張せず、確かに共感しながら、ヒューマニストな視点で見つめている。
    LETRAS LIBRES(メキシコ・スペイン/カルチャー誌)

『やまぶき』は大きな優しさで、人と人の繋がりを繊細かつ多彩に紡ぎあげる。複数であることこそが世界だからだ。
    On se fait un ciné(フランス/映画サイト)

FESTIVALS

※2022年8月時点

第75回カンヌ国際映画祭 ACID部門 ※日本映画初
第51回ロッテルダム国際映画祭 タイガーコンペティション部門
フィルマドリッド2022 クロージング上映
第19回ゴールデン・アプリコット・エレバン国際映画祭 非コンペティション部門
グアナフアト国際映画祭2022 国際コンペティション部門
スプリット映画祭2022 国際コンペティション部門
ブラジリア国際映画祭2022 国際コンペティション部門
インラン・ディメンションズ国際芸術祭2022

CREDITS

カン・ユンス祷キララ

川瀬陽太 和田光沙 三浦誠己 青木崇高
黒住尚生 桜まゆみ 謝村梨帆 西山真来 松浦祐也
監督・脚本:山﨑樹一郎

プロデューサー:小山内照太郎、赤松章子、渡辺厚人、真砂豪、山崎樹一郎
制作プロデューサー:松倉大夏 撮影:俵謙太 照明:福田裕佐 録音:寒川聖美
美術:西村立志 俗音:近藤崇生 音楽:オリヴィエ・ドゥパリ
アニメーション:セバスチャン・ローデンバック 編集協力:ヤン・ドゥデ

製作:真庭フィルムユニオン、Survivance 配給:boid/VOICE OF GHOST

2022年|日本・フランス|16mm→DCP|カラー|5.1ch|1:1.597分

© 2022 FILM UNION MANIWA SURVIVANCE

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